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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「その他心理学」の記事一覧

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脳化指数

そもそも,動物の知能測定はやっかいだ。しかも,外見だけに頼ると,簡単にだまされる恐れがある。タコは全身頭のように見えるが,腕から上のふくらんだ部分はほとんどが胴体だ。メインの脳を包み込むように食道があり,さらにややこしいことに,脳の大半は腕にある。ともかく,脳の大きさが知能を表わしていると考えるのは問題がありそうだ。脊椎動物では,脳のサイズは体が大きくなるのに比例して増大するように見えるので,体重に占める脳の重量の割合に基づいて脳化指数(EQ)という指標が考案された。想定される知能を簡略に表わす方法だ。人間はいちばん高くて,約7.4になる。イルカは5.3あたりでほとんど動かず,猫は1.0,ネズミは0.4だ。そこから,脳が体重に比べて小さくなるにつれて,指数はどんどん下がってゼロに近づく。EQで査定すると,タコはあまり上位に来ない。マダコが何とか0.026ぐらいのEQでとどまっている。ミズダコは腕を広げた長さが4メートル以上になることもあるのに,大脳はクルミ1個か2個分の大きさしかない。ずいぶん小さいと思うかもしれないが,アンダーソンの指摘どおり,脳の大きさは地上最大の生物と言われた恐竜と大差ない。

キャサリン・ハーモン・カレッジ 高瀬素子(訳) (2014). タコの才能:いちばん賢い無脊椎動物 太田出版 pp.140-141
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勝手な先入観

動物の考え方を解明するのに,わたしたちは勝手な先入観も持ち込んでいる。動物の行動に人間の枠組みを当てはめるのは簡単だし,当然の成り行きだとも言える。ハチは前回の探索のことを思い返して,蜜のある花のもとへ戻るのだろうか?ミミックオクトパスは前もって計画を立てて,あまり食欲をそそられないヒラメそっくりに化け,天敵に食われないようにするのだろうか?動物の行動の多くは,意識的に考えたり計画したりした結果ではなさそうだ。むしろ,仲間を蜜の在り処へ誘導するハチや,ヒラメに擬態するタコは,長年積み重なった自然淘汰の賜物だと考えた方がいい。淘汰されるごとに,役に立つ習性を身につけて苦難を乗り越えてきたのだ。

キャサリン・ハーモン・カレッジ 高瀬素子(訳) (2014). タコの才能:いちばん賢い無脊椎動物 太田出版 pp.140

書くべきことは山ほど

優先順位の話をすると,「でも,何も書くことがないときにはどうすればよいのでしょうか」とよく聞かれる。大学教員の場合,何も書くことがないという状態はまずありえないはずだ。実際,僕の知っている教員は,たいていは未発表データを山のように抱えている。データを集めるのは簡単だが,データについて書くのは難しい。10年前に行った未発表の実験データがあるなら,「何も書くことがない」状態になるまでにしばらく時間がかる。それどころか,書けば書くほど,書いておく必要のあることが増える。

ポール・J・シルヴィア 髙橋さきの(訳) (2015). できる研究者の論文生産術:どうすれば「たくさん」書けるのか 講談社 pp.43-44

権威の正当性を裏づける原則

これが「権威の正当性を裏づける原則」だ。権威の正当性を成りたたせるものは3つある。第1に,権威に従う側に発言権があること。異議を唱えたとき,傾聴してもらえるかどうか。第2に,法の運用に信頼性があること。今日の法律が,明日もおおむね同じように適用されることだ。第3に,権威に公平性があること。この集団とあの集団で対応が異なってはいけない。
 世の賢い親たちはこの3原則を無意識のうちに実践している。ジョニーが妹を叩いて困る。やめさせるには,今日はどなりつけたのに,明日は知らんぷりといった一貫性のない対応ではだめ。妹がジョニーを叩いたときも同様だ。もしジョニーが叩いていないと言いはったら,説明するチャンスを与える。罰を与えるときは,罰の中身もさることながら,「どう」罰するかということも重要だ。

マルコム・グラッドウェル 藤井留美(訳) (2014). 逆転!強敵や逆境に勝てる秘密 講談社 pp.192-193

障害が故に

この事実は2通りの解釈ができる。ずばぬけた資質を持つ人は,障害をものともしないというのがひとつ。頭の回転と創造力がケタはずれなので,一生付きあわなくてはならない障害を抱えていても,成功を勝ちとることができるというわけだ。だがそうではなく,障害を持っていたがゆえに成功したと考えることもできる。障害を抱えて悪戦苦闘する過程で,糧となる何かをつかんだのだと。わが子が識字障害でなくてよかったと思っている人も,2番目の可能性を知ると考えが揺らぐかもしれない。

マルコム・グラッドウェル 藤井留美(訳) (2014). 逆転!強敵や逆境に勝てる秘密 講談社 pp.105

幸福そのものは

幸福に関するさまざまな理論がポジティブ心理学の分野から生まれていますが,すべてのポジティブ心理学者が実質的に合意ができることがひとつあるとすれば,それは次のことです。幸福に至るには多くの方法がありますが,幸福そのものを見つけられないということです。どんなものも,出来事も,成果や人生の状況も,真の幸福を運んでくれたりはしません。私たちは——自身への見返りをもたらす活動に真剣に取り組むことによって——みずから幸福を生み出さなければならないのです。

ジェイン・マクゴニガル 妹尾堅一郎(訳) (2011). 幸せな未来は「ゲーム」が創る 早川書房 pp.71

フローと幸福

ポジティブ心理学者が論じているように,フローとは幸福の全体図のうちの,ほんの一部分にすぎません。心理学者が研究した最初の幸福の種類ですが,その後も科学は大いに進化しつづけています。エモリー大学の心理学教授,コリー・リー・M・キーズは,「フローは幸せに関する科学の一部であり,すべてではありません。……(中略)……人間の機能の性質や条件というより,むしろ一時的な状態を表しています。フロー状態を持続させる研究は行われていますが,私たちがずっとその状態に居続けられるとは考えていません」と説明しています。
 フローは刺激的な瞬間です。活力を与えてくれます。大きなフローを経験すると,気分のよい状態が数時間,あるいは数日続きます。ですが,フローはあまりに強烈な没入状態のため,結局は私たちの肉体的,精神的なエネルギーを使い果たしてしまうのです。

ジェイン・マクゴニガル 妹尾堅一郎(訳) (2011). 幸せな未来は「ゲーム」が創る 早川書房 pp.67-68

勝つことよりも続けること

多くのゲーマーは勝つこと——それによってゲームを終えること——よりもプレイし続けることを選びます。フィードバックの強いゲームは,突き詰めていけば勝利の満足感よりも強く没頭している状態のほうが心地よいのかもしれません。

ジェイン・マクゴニガル 妹尾堅一郎(訳) (2011). 幸せな未来は「ゲーム」が創る 早川書房 pp.44

フロー状態

言い換えれば,優れたゲームは,あなたのスキルのもっとも先端のところで相手をしてくれて,あなたのミスを誘う紙一重のところにいます。そしてあなたがミスをすると,もう一度挑戦したい気にさせられます。そのことが,能力の限界ぎりぎりで取り組むことに何より夢中になれる理由です——この状態を,ゲームデザイナーや心理学者は「フロー」と呼んでいます。フロー状態にあるとき,あなたはその状態にとどまりたくなります。途中で止めてもクリアしてしまっても不満足な結果になってしまいます。

ジェイン・マクゴニガル 妹尾堅一郎(訳) (2011). 幸せな未来は「ゲーム」が創る 早川書房 pp.44

自尊感情の強化

特に有益だと考えられるのは,自尊感情を強化していくことです。妬みや恨み,嫉妬,正義という快感に溺れるとき,そこに通底しているのは,自尊感情の低さです。その不快感を解消するために,ネガティブ感情が生じて,脳がその原因となる要素を排除する行動を,個体にとらせようとするわけです。
 であれば,自尊感情の低さが問題にならなくなれば,ネガティブ感情をもつ必要もなくなります。自尊感情が低くなる原因には,認知のゆがみがあるので,これを修正していくことも有効ですし,みずから豊かであること,自分が尊敬に足る存在であることを認めていくことがまずは,自分の感情のコントロールの基本の一歩になるでしょう。

中野信子・沢田匡人 (2015). 正しい恨みの晴らし方:科学で読み解くネガティブ感情 ポプラ社 pp.189

ネガティブ感情の意味

嫉妬などのネガティブ感情を持つことは苦しいものです。
 プライド,自尊心,罪悪感,モラル,さまざまな脳の機能が一気に活動して混乱し,自分ではなかなか鎮めることは困難でしょう。
 一方,ネガティブ感情には相応の意味があり,その最大の意義は,ネガティブ感情が個体にとって,集団内で適切な行動をとらせるためのフィードバックシステムであるという側面です。
 罪悪感の正体は,こういうことをすると集団から排除されて生存・生殖が難しくなるぞ,という計算結果の表出です。脳はこういう生死に関わりかねない部分の計算は,非常に速いですね。
 相手を恨む自分を責める,というのも,オーバーサンクションを抑制するための負のフィードバック機構と考えると非常に機能的な感情です。なかなか良くデザインされているなと思います。

中野信子・沢田匡人 (2015). 正しい恨みの晴らし方:科学で読み解くネガティブ感情 ポプラ社 pp.187-188

既読スルーのスルー

では,私たちはなぜ,「既読スルー」をスルーできないのか。
 それは,自分が侮辱されたと感じるからです。相手からの返事を期待しているのに,その通りにならないと,多かれ少なかれ感情が崩れてしまいます。そして,場合によっては,返信がないことによって傷つけられたと感じ,その相手を恨んでしまうのです。

中野信子・沢田匡人 (2015). 正しい恨みの晴らし方:科学で読み解くネガティブ感情 ポプラ社 pp.146

社会正義

私は,社会正義ほど恐ろしいものはないと考えています。個人的には,お金が欲しいという欲求を肯定して行動できる人の方を,社会正義を標榜して他者に制裁を加える人よりは信頼できると思っています。

中野信子・沢田匡人 (2015). 正しい恨みの晴らし方:科学で読み解くネガティブ感情 ポプラ社 pp.136

愛すべき他者

「点」でしか分かり合えない曖昧な正義に基づいて,誰かを恨んだり妬んだりするのが人間という生物の性なのでしょう。それは時として,自分のプライドを維持するのに役立つ場合もあります。しかし,権利を振りかざし,正義に魅了されると,私たちはいとも容易く感情に操られてしまう,か弱い生き物でもあるのです。だからこそ,私たちは誰かに寄り添い,生きていくしかありません。自分がこだわる正しさに理解を示し,苦しい気持ちを受け止めてくれる,愛すべき他者の存在を求めるのです。

中野信子・沢田匡人 (2015). 正しい恨みの晴らし方:科学で読み解くネガティブ感情 ポプラ社 pp.117

因果応報

私たちは,基本的に因果応報を信じています。だからこそ,悪いことをした人が不幸になるドラマを見てスッキリするのです。これは,シャーデンフロイデそのものです。
 妬みや恨みなどの感情を抱え込んで鬱々とせずに,ドラマを観て溜飲を下げる。なるほど,誰かを傷つけるよりは,はるかにコストの少ない恨みの和らげ方かもしれません。

中野信子・沢田匡人 (2015). 正しい恨みの晴らし方:科学で読み解くネガティブ感情 ポプラ社 pp.97

妬ましい時

妬ましい気持ちになったとき,私たちはどうしたらよいのでしょう。
 まずは少し深呼吸をして,自分が何を妬んでいるのか,誰を恨んでいるのかを考えてみることです。たとえば,仕事の成果に対する評価が不本意なのか,同期の出世が妬ましいのか,意思決定の曖昧さに苛立っているのかなど,自分が置かれた状況を見つめ直します。
 続いて,自分の妬みを抽出していきます。妬ましいが故に相手を全否定し,白か黒かだけで見ると,救いや余裕がなくなります。ですから,同期のあいつはいい奴だとわかっている……別にあいつを全否定するつもりはない……ただ,能力も仕事の業績も自分より劣っていると思っていただけに,あいつが先に課長になったという現実だけが納得できない……というように考えて,徐々に妬みの原因を炙り出していくのです。
 そして,自覚できるようになった妬みの感情を脇に置いて,目の前にあること,やるべき仕事に没頭するのです。こうして妬みから目を背けることなく距離を置ければ,名状しがたい感情に振り回されずに済みます。

中野信子・沢田匡人 (2015). 正しい恨みの晴らし方:科学で読み解くネガティブ感情 ポプラ社 pp.69-70

ウェルテル効果とパパゲーナ効果

メディアと自殺の関係を調べた研究からは,単なる自殺報道は自殺を誘発する可能性があることが示されている。いわゆる「ウェルテル効果」と呼ばれる現象であるが,啓発活動がこのような効果をもたらす可能性は否定できない。それに対して,モーツァルトのオペラ「魔笛」の登場人物にちなんでつけられた「パパゲーナ効果」と呼ばれる現象がある。これは,単なる自殺報道とは違って,厳しい現実の中で死を考えた人がその死を乗り越えたという報道には自殺予防効果があるというもので,今後の啓発活動のあり方に重要な示唆を与えるものである。

大野 裕 (2014). 精神医療・診断の手引き:DSM-IIIはなぜ作られ,DSM-5はなぜ批判されたか 金剛出版 pp.161

幸運のお守り

そう,私たちは儀式的な方法で幸運を祈ったり,お守りやラッキーアイテムを使うことで,記憶ゲームのような認知的タスクや,ゴルフのようなスポーツで,パフォーマンスを改善することができるのです。だとすれば,あなたが考えることは,自分にとって幸運のお守りとは何かということだけなはずです。

ロバート・ビスワス=ディーナー 児島 修(訳) 2014). 「勇気」の科学:一歩踏み出すための集中講義 大和書房 pp.148

魔術的思考

心理学者のジェーン・リーセンらは,一連の研究によって,神意に逆らうような状況に置かれた被験者は,否定的な結果を予測する傾向が高いことを明らかにしています。
 たとえば,ある若者がスタンフォード大学に願書を提出したとします。すると,孫を応援する祖母から,スタンフォード大学のロゴが描かれたTシャツが送られてきます。
 当然ながら,このTシャツと,彼がスタンフォード大学に合格するかどうかとはまったく関係ありません。彼はそのTシャツを大切に身につけることもできれば,汚れた衣服がいっぱいのクローゼットにしわくちゃにして放り込むこともできます。前に述べたとおり,若者が大学に合格するかどうかは,彼がTシャツをどう扱うかとは無関係です。
 それでも私たちは,Tシャツを大切にしなかった場合,彼が大学に受かる確率が低くなるのではないかという,魔術的な考えを頭に思い浮かべずにはいられません。実際,リーセンらの実験の被験者も,このような状況で警戒心を高め,良くない結果を予想しました。

ロバート・ビスワス=ディーナー 児島 修(訳) 2014). 「勇気」の科学:一歩踏み出すための集中講義 大和書房 pp.130

ミシェルのマシュマロ

ダックワースはウォルター・ミシェルと共同研究をはじめた。ミシェルはコロンビア大学の心理学の教授で,社会科学の研究者のあいだではいわゆるマシュマロ・テストの研究で有名である。1960年代後半,当時スタンフォード大学の教授だったミシェルは4歳児の自制心をテストする独創的な実験を考えだした。スタンフォードのキャンパスにある保育園で,子供をひとりずつ小さな部屋に連れていって机の前に座らせ,マシュマロなどのおやつをさしだす。机の上には呼び鈴がある。実験者は,これからちょっといなくなるけどわたしが戻ってきたらそのマシュマロを食べていいわよ,と告げる。そのとき,子供に選択肢を与える。マシュマロが食べたくなったら呼び鈴を鳴らせばいい。そうすれば実験者は部屋に戻り,子供はおやつを食べられる。ただし,実験者が自分から戻るまで呼び鈴を鳴らすことなく待てたらマシュマロはふたつもらえる。
 ミシェルは誘惑に抵抗するために子供たちがそれぞれに使う方法を研究するつもりでこの実験をおこなった。しかしその後10年以上が経ち,褒美を我慢する能力が子供たちの将来の成果とどう関連するかを調べはじめると,新たな側面が見えてきた。1981年の時点で見つけられたかぎりの生徒の追跡調査を実施したところ,マシュマロを我慢できた時間とその後の成績の相関には目をみはるものがあった。おやつを15分我慢できた子供たちの学力検査の得点平均は,ものの30秒で呼び鈴を鳴らした子供たちの平均を210点も上まわった。

ポール・タフ 高山真由美(訳) (2013). 成功する子 失敗する子:何が「その後の人生」を決めるのか 英治出版 pp.109-110

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