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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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奴隷貿易

アフリカの奴隷貿易の残酷さは,人類史のなかでも際立っている。16世紀から19世紀にかけて,少なくとも150万人のアフリカ人が大西洋を航海する奴隷船で死亡した。奴隷たちは鎖でつながれ,息が詰まるような悪臭と汚物の充満する船倉に押し込められていた。ある記録によれば,「港に着くまで生き延びた者は言語を絶するほどの悲惨な姿を呈していた」という。さらにジャングルや砂漠を歩いて沿岸部や中東の奴隷市場に連れて行かれるまでの間にも,何百万人もの奴隷が死亡した。奴隷業者はさながら氷の売買のように奴隷を扱い,輸送の途中で商品の一部が失われることは織り込み済みだった。奴隷貿易では少なくとも1700万人,最大で5600万人ものアフリカ人が死亡したと考えられる。奴隷貿易は輸送中に奴隷の命を奪っただけでなく,途切れることなく奴隷を供給することによって,奴隷所有者が奴隷を死ぬまで酷使し,足りなくなれば新しい奴隷を補充できるようにした。たとえ比較的良好な健康状態を保つことができた場合でも,奴隷たちは鞭打たれての労働やレイプ,四肢切断,家族との離別,簡易死刑などの恐怖に怯えながら生活しなければならなかった。
 奴隷所有者が奴隷に対して個人的に親密な感情を抱くようになり,自らの意志で奴隷を解放することも少なくなかった。また中世ヨーロッパのように,奴隷制が農奴制や小作制度へと移行する場合もあった。奴隷を拘束状態に置いておくより税金を課した方が安上がりだったり,弱小の国家では奴隷所有者の財産権を行使できなかったりしたからだ。だが制度としての奴隷制に反対する大衆運動が起きたのは18世紀になってからであり,その後奴隷制は急速にほぼ消滅に近い状態へと追いやられた。

スティーブン・ピンカー 幾島幸子・塩原通緒(訳) (2015). 暴力の人類史 上巻 青土社 pp.286-287
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