読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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いずれにしても,私たちは知能が普遍的に有利だと考えるが,かならずしもそうではない。どの形質にもトレードオフがあり,学習の速さも例外ではないのだ。問題に速く反応する勇敢な鳥には,速度が速いことと正確性のあいだにトレードオフがある。たとえばサイモン・デュカテスは,バルバドス島のコクロムクドリモドキに問題を解くのが速い個体と遅い個体がいることを発見した。しかし結局のところ,問題をゆっくり正確に解くコクロムクドリモドキと比べて,速く問題を解くコクロムクドリモドキは逆転学習などのテスト(バルバドスアカウソがしたようなテスト)の成績が振るわなかった。「大胆な個体はより速く全体を見ますが,表面しか見ていないのです」とダニエル・ソルが説明する。「よりじっくりと問題に取り組む個体がより良い情報を引き出し,それを使ってより柔軟に行動します」
では,なぜ両方のタイプが1つの集団に残っているのだろう?「おそらく,異なるタイプの個体が環境のことなる年にいい結果を出すからだろう」とデュカテスは推測する。このことが,個体ごとに認知能力が異なる理由を説明するのかもしれない。そして,スズメが教えてくれたように,いろいろな個体がいることがいい理由も。
ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 394
日本は無畜農業,ヨーロッパは有畜農業とする比較のやり方も,かならずしも実情を十分に説明するものではない。こうしたとらえ方は,日本人の立場では,ともすれば,穀物生産を農業の主体と考え,それが無畜であるか有畜であるかを論じることになりやすい。ところが,ヨーロッパでは。家畜飼育と穀物栽培のどちらが主で,どちらが従であるか,そう簡単には決められない。主食と副食の区別がないのと同じように,両者はむしろ対等関係にある。
鯖田豊之 (1966). 肉食の思想 中央公論社 pp. 43-44