読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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鳥にも個性がある。個性という言葉は人間の性質を指す響きがあるため,この言葉を嫌って,気質,対処法,行動様式などの用語を好む科学者もいる。しかし,なんと呼ぼうと,個々の鳥には人間と同様に時と場所を超えて安定し,一貫している行動パターンがある。大胆な者と意気地がない者,好奇心に満ちた者と慎重な者,冷静な者と神経質な者,学ぶのが速い者と遅い者がいる。「個性のちがいは,リスクに対する反応の個体差を反映すると考えられています」とアプリンは説明する。
ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 165
もちろん,これはみな人間から見た知能の尺度だ。私たちはどうしてもほかの動物の脳を人間中心に考えてしまう。しかし鳥にも人間の知力のおよばない世界があり,それをただ本能や生得の能力で片づけることはできない。
鳥は遠くから近づいてくる嵐をどのような知能によって知るのだろう?何千キロも離れた,行ったこともない場所へのコースをどう見つけるのか?ほかの動物の複雑な鳴き声をいかにして正確に真似るのだろう?約100~1000平方キロ近くの土地に数千粒の種を隠しておき,どのようにして半年先までその場所を覚えているのだろう(鳥が私たちの知能検査に合格しないように,私もこの種の知能検査には見事に不合格になるだろう)?
ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 19-20
リスクをとる態度は,人によって大きく違う。非常に安全志向の人と,とてもリスクが大きなことにチャレンジする人がいるのは事実だ。事業に失敗するリスクを負って起業する人もいれば,失業のリスクが少ない公務員になる人もいる。スカイダイビングのような危険なスポーツを楽しむ人もいれば,そうでない人もいる。リスクを嫌う人は宇宙飛行士になりたいとは思わないだろう。資産のすべてを定期預金にしている人もいれば,多くを株式に投資している人もいる。こうした差には,生まれつきの性格の違いも影響しているかもしれない。
大竹文雄 (2017). 競争社会の歩き方 中央公論新社 pp. 88
尤も,対極性に関しては,或る程度まで辞典に記載されている反意語などが参考になるので,とりあえずそうした資料を利用すればよい。「明るい」の反対が「暗い」であるといったことは,かなりの適切さを以て判断し得るといえよう。問題は,反意語が何とおりもある場合である。たとえば,「しみじみとした」の反対が「浮き浮きした」なのか,それとも「わくわくした」なのか,簡単には決められない。また,或る2つの形容語が仮に座標軸上の原点を中心として両側に位置づけられる関係にあるとしても,原点からの距離が相互に等しいかどうかという段になると,事は一層厄介となる。こうした場合,一体,どのような解決方法が考えられ得ようか。
岩下豊彦 (1983). SD法によるイメージの測定 川島書店 pp. 50
人が或る刺激の認識に伴って表象する概念を直接的に把握する手法は,それまでにも数多くあった。(1) 自由連想法,(2) 制限連想法,(3) 評定法,等々である。しかし,たとえば「オートバイについてどんなことを思い浮かべますか」と問う自由連想法は,オートバイをめぐるさまざまな先行経験の中から特にそれらが想起されるに至ったという意味での自発性と重要性とをもつ反応が得られる反面,同一対象をめぐる他者の反応結果と比較したり,同一人物における他の対象への反応結果と比較したりする場合の共通項が得がたいといった難点を抱え,たとえば「オートバイについてどんなことを思い浮かべるか,次の中から該当するものを選んでください」と問う制限連想法は,反応結果を相互比較する際の共通項が揃えられる反面,それぞれの選択肢がその者のオートバイに対する反応の可能性をどの程度網羅していたかに関し保証し得ないといった難点,および,選択された反応項目ごとに当人該当性の程度がちぐはぐとなる危険が伴うといった難点を抱え,たとえば「オートバイについての次の諸反応がそれぞれあなたにとってどの程度ぴったりしているか,各反応項目ごとに用意されている‘非常にそう思う’から’全くそう思わない’の7段階尺度上で判断してください」と問う評定法は,反応項目それぞれに対する当人該当性の程度を知り得る反面,反応項目の網羅性に関する保証の点で何ら改善がなされていない難点を抱えていた。SD法が或る対象をめぐる表象内容の測定法として広く普及をみたのは故なきことではない。SD法は,いったん,夥しい数の反応項目を用意したうえで因子分析に拠りそれらを整理し,次に,整理された各群から代表的な反応項目を選びそれぞれへの評定を求める場へ臨む,という2段構えの手続をとることで,“或る対象をめぐる連想反応の主要な範囲を網羅した項目を設け,そのうえで各反応項目についての当人該当性を調べる方法”を確立したのである。
岩下豊彦 (1983). SD法によるイメージの測定 川島書店 pp. 16-17