読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
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二度の世界大戦では,ハトは機密情報を迅速に伝えるために使われた。暗号を書いた紙をくくりつけられたハトが,部隊の移動を伝えたり,占領された国で抵抗勢力と連絡を取ったりするために,敵方の前線を越えて送られた。この翼を持つスパイは,「ザ・モッカー」「スパイク」「ステディ」「ザ・カーネルズ・レディ」「シェ・アミ」などと呼ばれた。リーバイによれば,シェ・アミは「途中で脚を負傷し,胸骨を痛めたにもかかわらず」使命を果たしたという。「ウィルソン大統領」という名のハトは第一次世界大戦で左脚を失った。スコットランドの「ウィンキー」は爆撃機の乗組員たちと一緒に北海に墜落した。ウィンキーは破損した機体から放され,約190キロを軽々と飛んでダンディー近くの鳩舎に戻り,そこの空軍基地に墜落を知らせた。基地では救助の飛行機を飛ばして,孤立した乗組員を救助した。
ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 303
以上を受けて筆者は,肝心なのは結婚・出産を望む人がそれを叶えられる社会を実現することであり,今でもほとんどの人は結婚して子どもを持ちたいと考えている以上,経済的な障壁を取り除くことで十分な少子化対策になると考える。
筒井淳也 (2015). 仕事と家族 中央公論新社 pp. 38
だが,年をとるほど,無邪気な東大信仰が現れてしまう。同僚や記者に最終学歴を聞きまくっていたことがある。宮澤の「何年卒ですか」というのは,東京大学法学部を前提とした話で,相手が他大学であると知れば「ふ~ん,そうですか」と小バカにする態度を示してしまう。本人はそのつもりはないが,不愉快な思いをした人は少なくない。もともと,勉強ができる,知識を十分に兼ね備えていることを鼻にかける傾向があったので,なおさらだった。まわりを気遣える頭のよさは不十分だった。神童はこんなところで評価を下げてしまう。政治家としての経歴に水をさしてしまい,もったいない。
小林哲夫 (2017). 神童は大人になってどうなったのか 太田出版 pp. 169
まず,「高齢化社会を控えているので新たな財源が必要」というプロパガンダについて。
これを聞いて,国民は渋々ながら納得したようです。確かに日本は高齢化社会に突入する。そのためには,お金もたくさん必要なのだろうと,お人好しな日本人は思ってしまいます。
しかし,消費税導入後の国家予算を検討すれば,消費税が高齢化社会のために使われていないということは明白なのです。
消費税の導入で,新たに10兆円の財源となりました。
しかし,ほぼ同時期に行われた大企業や高額所得者の減税で,その10兆円分は消し飛んでしまったのです。
そして,消費税が導入されたあと,高齢者福祉が充実したようなことはなく,社会保険料はたびたび引き上げられ,さらに新たに介護保険料まで取られるようになってしまいました。
大村大次郎 (2015). 元国勢調査官が明かす 金を取る技術 光文社 pp.174-175
消費税導入のプロパガンダは,大まかに言って2つの論旨がありました。
一つは,少子高齢化問題です。
日本はこれから少子高齢化を迎えるので,財源が足りない,だから増税が必要なのです,ということを長期間にわたって訴え続けたのです。
もう一つは,「日本は諸外国に比べて間接税が低い」ということです。
諸外国はもっと高い間接税を払っています。だから,日本はもっと間接税を上げるべきです,ということを何度も何度も繰り返し,喧伝したのです。
その喧伝が功を奏し,国民はだんだん消費税について許容するようになっていきました。
大村大次郎 (2015). 元国勢調査官が明かす 金を取る技術 光文社 pp.173-174
そもそもサラリーマンの現在の税金(源泉徴収制度)というのは,戦争中のどさくさにまぎれてつくられたものなんです。
信じられないかもしれませんが,戦前はサラリーマンに税金が課せられていなかったのです。サラリーマンの給料に課税されるようになったのは,戦時中のことです。
それまでは,会社が税金を払っているので,その従業員であるサラリーマンは税金を払わなくていいということになっていたのです。
実際,会社ではその利益から税金を払っているわけだから,その社員にも税金を課せば,二重取りのようなことになりますからね。
でも,戦局が悪化し,軍費が不足したために,苦肉の策として戦時特別税としてサラリーマンから税金を取るようにしたのです。
しかも,その徴税方法は,会社に命じて天引きさせる,という「源泉徴収」の制度が取り入れられました。この源泉徴収制度は,同時期にナチスドイツで始められ,効率がいいということで日本もそれを取り入れたのです。
戦時中の特別税ですから,本来ならば,戦争が終われば廃止されていいはずでした。しかし,終戦後,極度の税収不足が続いたので,サラリーマンの特別課税はそのまま継続されたのです。
このように,本来,臨時的な税金であったサラリーマンの税金ですが,戦後の混乱が終わり日本経済が落ち着いたころには,国の税収の柱となっていました。そして,今さら廃止できない,ということになったのです。
またバブル崩壊以降は,税収不足になれば,サラリーマンの税金を上げるというパターンが続けられ,40%以上もの高負担率となったのです。
戦前の所得税の税率というのは,戦局が悪化する前までは8%でした。戦前,所得税を払っていたのは,かなりの金持ちです。金持ちですら8%の税金でよく,中間層以下には所得税は課せられていなかったのです。
大村大次郎 (2015). 元国勢調査官が明かす 金を取る技術 光文社 pp.158-159
名目的には,日本の国民の税金と社会保険料の負担率は約40%なので,スウェーデンやイギリス,ドイツなどよりは低くなっています。
でも日本の場合は,中間層以下に負担が非常に多くかかるようなシステムになっています。だいたい収入の半分は,何らかの形で税金もしくは税金もどきで取られてしまっているのです。
また日本の場合,消費税も食料品などの軽減制度がないので,低所得者ほど負担率が大きくなるようになっています。
詳しくは後ほど述べますが,消費税というのは消費したときにかかる税金なので,収入に対する消費の割合が高い人ほど,税負担が高くなります。たとえば,収入の全部を消費に使ってしまう低所得者は,収入に対する消費税の負担割合は,ほぼ8%になってしまいます。しかし,収入の半分を貯蓄に回せる高所得者の場合は,収入に対する消費税の負担割合は4%になります。
低所得者の負担している消費税8%を加味すれば,彼らの税負担率は50%を超えるでしょう。
低所得者層の負担率は,日本が世界で一番高いのです。
しかも,スウェーデンをはじめヨーロッパ諸国の方が,日本よりもはるかに社会保障が充実しています。高い税金でもそれなりの見返りがあるということです。
ところが日本の場合は,社会保障に使われる税金の割合は先進国の中でも下から数えた方が早いのです。
だから普通のサラリーマンにとって,実質的な税金,社会保険料負担率は,日本は世界一高いと言えるのです。
大村大次郎 (2015). 元国勢調査官が明かす 金を取る技術 光文社 pp.144-145
「住所地がないから生活保護の申請を受理しない」というようなことをする国は,先進国の中では日本だけです。
欧米では,ホームレスの支援をするとき,もっともオーソドックスな方法は,国籍をとらせることです。
国籍さえ取れば,国の保護を受けられるからです。つまり,欧米のホームレスのほとんどは,自国の国籍を持たない,不法移民,不法滞在者なのです。
正真正銘の自国民に,生活保護を与えない先進国は日本だけなのです。
大村大次郎 (2015). 元国勢調査官が明かす 金を取る技術 光文社 pp.123
核兵器からインターネットまで,あるいはレーダーから衛星航法まで,政府は大きな発明を多数生み出している。ところが政府は技術革新の方向性を見誤ることでも悪名高い。私がジャーナリストだった1980年代,ヨーロッパ諸国の政府はコンピューター産業を支援する各国の最新の取り組みについて自慢気に紹介してくれたものだった。プログラムはアルヴィー,エスプリ,「第五世代」計算機など人目を引く呼称を与えられ,ヨーロッパの産業を世界の頂点へと導くと考えられていた。彼らが手本としていたのは,やはり期待薄のアイデアであることが多かった。これらのアイデアを生み出したのは,当時流行の最先端にいたが,気のきかない日本の旧通商産業省(MITI)だった。これらのプログラムはかならず敗者を選び,企業を袋小路に追い込んだ。彼らが思い描く未来に携帯電話や検索エンジンは存在していなかった。
そのころアメリカでは,狂気の沙汰としか思えないセマテックという政府主導の計画が進行中だった。大企業がメモリーチップ(生産拠点は雪崩を打ってアジアに移りつつあった)製造に乗り出せば国の将来は安泰だという前提の下,アメリカ政府はチップ製造業に1億ドルを投入した。ただし各社が相互競争を慎み,当時急速にコモディティー産業になりつつあったこの業界にとどまる努力を払うという条件で。このために1980年に成立した独占禁止法を改正しなければならなかった。1988年になっても統制経済を推進する人びとは,シリコンバレーの中小企業を「いつまでも起業の夢に取り憑かれている」ため,長期投資の対象にならないと批判した。まさにこのとき,マイクロソフト,アップル,インテル,のちにデル,シスコ,ヤフー,グーグル,フェイスブック――すべて,いつまでも起業の夢に取り憑かれている企業であり,これらの企業にとってガレージやベッドルームが起業の場だった――は,投影経済派お気に入りの大企業をいくつもなぎ倒しながら,世界制覇の基礎固めをしていたのだ。
マット・リドレー 大田直子・鍛原多惠子・柴田裕之(訳) (2013). 繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史 早川書房 pp.410-411