読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
一般に,因子分析を経て選定された尺度上での評定値から当該尺度の帰属因子に関する概括値を導く過程を因子スコア化と呼び,概括値自身を因子スコアと呼ぶ。要は,各尺度上での評定値から次元ごとの値を求めることに他ならないが,概括の仕方としてさまざまなものが提議されており因子スコアなる概念を用いて語り合っているうちにやがて互いが全く異なる内包を指していた点に気づくといった例も稀でない。特に頻繁に生ずるのは,(1) 因子分析の結果から或る因子の代理者として特定の複数尺度を選んだことに重点をおき,当該因子の代理者と見做された複数尺度上での評定値を単純に平均する因子スコア概念,(2) 各尺度上での評定値へ当該尺度に関する因子別負荷量を乗じていったん因子ごとに値を按分し,その後因子別に按分された値を累積していく因子スコア概念,の両者間での喰いちがいである。
岩下豊彦 (1983). SD法によるイメージの測定 川島書店 pp. 123-124
ここで「なぜこうした回転が行なわれるか」についての問を想定するのが妥当というものであろうが,事柄は至極簡単なことに留まる。つまり,相関行列を数学的に共通性をもった因子へと分解するのが因子分析であり,その結果得られた因子と各尺度との関係に着目しながら因子のもつ意味を探ろうとするのが因子軸の回転なのである。因子分析があらゆる尺度間の相関関係を配慮に入れて数学的に因子へと分解していく過程であるのに対し,因子軸の回転は,因子分析結果で得られた因子と各尺度との関係の強弱(因子負荷量)を資料として因子の意味が鮮明になるようアクセント付けを行なう作業であるといってさしつかえなかろう。
岩下豊彦 (1983). SD法によるイメージの測定 川島書店 pp. 97-98
因子分析は,スピアマンが知能の研究(Spearman, 1904)において,「複数のテストに共通する知能の一般因子<g-factor>の存在」を主張した際採られた数学的処理を起源とする。スピアマンによって報告された6つの相関行列は表2-3のようなものであり,各種テスト間で決して低いと判断し得ぬ相関を示していることに拠って,「(1)どのテストも何か共通した知的能力を幾分かずつ測定している,(2)それぞれのテストが共通の知的能力以外に当該テスト特有の知的能力を測定しているためこれらの相関係数が1.0にならない」との示唆を得,当該テストが他の共通した知的能力を測定している部分を一般因子,測定している程度を一般因子負荷量,また,当該テストが特有の知的能力を測定している部分を特殊因子,測定している程度を特殊因子負荷量と呼ぶと共に各々の負荷量を算出するに至ったのが,それに他ならない。仮にスピアマンが表2-8のような結果(おれは全く架空の値である)を得ていたとしたら,彼は「知能には2つの主要な共通因子がある」と結論づけたであろう。
岩下豊彦 (1983). SD法によるイメージの測定 川島書店 pp. 63
では,どのような「影」を作れば,このようなビッグデータの隘路を抜け出せるだろう。つまり,ビッグデータからどのような情報を集めて利用すればいいのか,ということである。そこには満たさなければならない4つの規準がある。1つ目は,元になるデータセットは多数の人々の集団としての行動や行為が生み出したものなので,それらの人々の権利を守る必用があることだ。2つ目には,取り出した情報が興味深いものでなければならないことがあげられる。3つ目は,データを管理・監視している企業の目的に反するものであってはならないことである。そして,最後の4つ目は,元のデータから実際に作り出せなければならないことだ。
エレツ・エイデン ジャン=バティースト・ミシェル 坂本芳久(訳) (2016). カルチャロミクス:文化をビッグデータで計測する 草思社 pp. 91