私たちは,「なぜあの人はほかの人にとってはどうでもいいような宗教的信念をもっているのか?」という問いについて明確で意味のある答えを欲しがる。なぜかと言えば,私たちは(心理学者や人類学者のみならず,一般の人々も),個人差に多大の関心を寄せているからである。さらに,私たちは生まれながらに個人差に注意が向くようにできている。他者との相互作用はきわめて重要であり,相互作用は相手の性格にある程度依存している。(だから,大学の心理学の新入生のほとんどが,科学的な心理学の話題——たとえば,なにがヒトを冷蔵庫や牡蛎やゴキブリやキリンやチンパンジーと違ったものにするのか——よりも,なにがあなたと私の違いを生じさせるのかといった,性格の理論や知見に大きな関心を寄せるのだ。)なにがそれぞれの人を個性的にするのかを理解したいというこの強い欲求は,世界中のいたるところの世間話のなかで,多くの熟慮と憶測と私的な仮説検証の原動力になっている。
パスカル・ボイヤー 鈴木光太郎・中村潔(訳) (2008). 神はなぜいるのか? NTT出版 p.413
(Boyer, P. (2002). Religion Explained: The Human Instincts that Fashion Gods, Spirits and Ancestors. London: Vintage.)
PR