「通念(conventional wisdom)」という言葉を作ったのはウルトラ筆達者な経済学の賢人ジョン・ケネス・ガルブレイスだ。彼は通念という言葉をいい意味では使わなかった。「私たちは真理を自分に都合のよいことと結びつける」と彼は書いている。「自分の利益や幸せと一番相性のよいことを真理だと考えたり,あるいはしんどい仕事や生活の大変な変化を避けるために一番いいやり方を正しいことだと思ったりする。また,私たちは自尊心を強くくすぐってくれることが大好きだ」。ガルブレイスは続けて,経済・社会的行動は「複雑であり,その性質を理解するのは精神的に骨が折れる。だから私たちは,いかだにしがみつくようにして,私たちのものの見方に一致する考えを支持するのだ」。
つまり,ガルブレイスの見方によれば,通念は,単純で都合がよくて居心地よさそうで,実際居心地がよくなければならない——正しいとは限らないけれど,通念は必ず間違っていると言いきるのはバカなことだ。でも,どこかで通念は間違っているかもしれないと気づいたら——いい加減な,あるいはお手盛りな考えが残した飛行機雲に気づいたら——そのあたりは疑問を立ててみるのにはいいところだ。
スティーヴン・D・レヴィット,スティーヴン・J・ダブナー 望月衛(訳) (2007). ヤバい経済学[増補改訂版] 東洋経済新報社 p.102
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