言い換えると,クラック売人ギャングの仕組みは普通の資本主義企業とほとんどおんなじ:でっかく稼ぐにはピラミッドのてっぺん近くにいないとダメだ。社員はみな家族とか言ってる経営者のタテマエと全然違って,ギャングの給料は企業社会と変わらないぐらい偏っている。歩兵はマクドナルドでハンバーグをひっくり返してる人やウォルマートで棚を並べ替えてる人といろんな意味でそっくりだ。実際,J.T.の歩兵はだいたいみんな,違法な仕事のしょぼい稼ぎを補うために,まっとうな業種で最低賃金レベルの仕事もやっている。別のクラック売人ギャングのリーダーは,歩兵にもっと払ってもやっていくのは簡単だけどそれは賢いやり方ではないと語っている。「ええか,ワシの仕事を狙っとるニガーを山ほど抱えとるわけよ」と彼は言っていた。「そりゃまああいつらの面倒はみてやらんといかんけど,ボスはワシやっちゅーのをたたき込んでやらんといかんのや。まずワシがワシの取り分を取らんと,ワシはもうボスやのうなってしまう。ワシが損かぶったりしたら,あいつらワシをヘタレのクソったれじゃと思いよるからな」。
スティーヴン・D・レヴィット,スティーヴン・J・ダブナー 望月衛(訳) (2007). ヤバい経済学[増補改訂版] 東洋経済新報社 pp.
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