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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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クラック・ブームの影響

 アメリカ黒人に取って,第2次世界大戦からクラック・ブームまでの40年間は,安定した,時によっては急激な改善がはっきり見られた時期だった。とくに1960年代に公民権が法律に盛り込まれてからは,アメリカ黒人の社会的地位がやっと向上した証拠がはっきり現れている。黒人と白人の所得格差は縮小していた。黒人の子供の試験の点と白人の子供の点もそうだった。おそらく一番心強い進歩は乳幼児の死亡率だ。1964年でさえ黒人が乳児の間に死ぬ確率は白人の2倍だった。それも下痢や肺炎みたいな初歩的な病気で死ぬことが多かった。連邦政府が病院の区別をやめさせてからはそれが変わった——たった7年間で,黒人乳児の死亡率は半分に減った。1980年代までに,アメリカ黒人の生活はほとんどすべての面で良くなっていたし,改善がとどまる兆しは見えなかったのだ。
 そんなときにクラックがやってきた。
 クラックが黒人に限って大流行したわけではぜんぜんないけれど,黒人の住む界隈での吹き荒れ方が一番ひどかった。先ほど挙げた社会的地位向上の指標でもそれがわかる。何十年も下がってきていた黒人の乳児死亡率が1980年代に急に上がっている。未熟児や捨て子の比率もそうだ。黒人の子供と白人の子供の成績格差も広がった。投獄される黒人の数は3倍になった。クラックが与えた害はとても大きく,クラック使用者とその家族だけでなく,アメリカ黒人全体で平均してみても,この集団に戦後見られた進歩が急に止まってしまったばかりか,10年分も逆戻りしている。1つの原因がクラック・コカインほどひどい被害をアメリカ黒人に与えたのはジム・クロウ法以来だった。

スティーヴン・D・レヴィット,スティーヴン・J・ダブナー 望月衛(訳) (2007). ヤバい経済学[増補改訂版] 東洋経済新報社 pp.133-134
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