1966年のルーマニアにもう一度戻ってみよう。何の前触れもなく突然に,ニコラエ・チャウシェスクは中絶を禁止すると宣言した。中絶禁止以降に生まれた子どもたちはそれ以前に生まれた子どもたちより犯罪者になる可能性がずっと高かった。なぜだろう?他の東欧諸国やスカンジナビア諸国の,1930年代から1960年代のデータを調べても同じような傾向が現れる。ほとんどの場合,中絶は全面的に禁止されてはいなかったが,中絶を受けるためには裁判所から許可を取らなければならなかった。中絶を却下された女性は子供を愛せなかったりいい家庭環境を作れなかったりする場合が多かったのを研究者たちが発見した。所得や年齢,教育,母親の健康といったデータを調整してもなお,そういう子供は犯罪者になる可能性がとても高いことがわかったのだ。
スティーヴン・D・レヴィット,スティーヴン・J・ダブナー 望月衛(訳) (2007). ヤバい経済学[増補改訂版] 東洋経済新報社 pp.161-162
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