若い人にときどき見られる傾向として,「俺,それ駄目」「私,それだけは許せない」というような「嫌悪の主張」がある。もともと子供ほど好奇心があって,いろいろな対象に目を向ける素直な感性を持っているはずなのに,何故,若者はこういう言動をとりやすいのだろうか?僕が思いついたのは,「若者は,年寄りの真似をすることで,早く大人になろう,大人として認めてもらおうとしている」という理屈である。年寄りほど,難しい顔で「つまらないからやめておきなさい」と言いたがる。子供から見ると,大人というのは,「それは駄目」「それは危ない」という否定指向のシンボルなのだ。だから,若者は自分にとって危険なものを早く見極めそれができたと主張することで,「豊かな経験」的なものをアピールしようとしている。自分も一人前の大人であることを無意識に主張している姿なのだ。
森博嗣 (2009). 自由をつくる 自在に生きる 集英社 p.167
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