日本でも最近,「魚離れ」が取りざたされています。
しかしそういう話のときによく出てくる,「日本人は昔から魚食民族だった」という言い方は,実は眉唾なのです。もちろん,魚を食べる多くの料理法が日本にはあり,昔から魚を食べていた点では間違いないのですが,現在のように,かつての日本人も大量の魚を食べていたかというと,それは違うとはっきり言えます。
というのも日本における明治期からの水産物消費量のデータを調べてみると,消費が増え出したのは大正時代に入ってからなのです。
1910年ぐらいから消費が増えはじめ,第二次世界大戦にともなって大きく減り,戦後再び増え出しています。
1960年代には急増していますが,1980年代後半にピークをつけて以後は,1人当たりの消費量が減りはじめています。
こうしたデータから,私たち日本人が本格的に魚を消費しはじめたのは,1960年くらいから始まる比較的新しい現象であり,それももうピークは過ぎているということがわかってきます。
川島博之 (2009). 「食料危機」をあおってはいけない 文藝春秋 p.55
PR