潤沢さを広い視点で見ると,他の国からの豊富な労働力をもたらすグローバリゼーションなど,すべてを押し流す影響力を持つものもある。今日,衣服などの生活必需品はとても安いので,使い捨てが普通だ。1900年に,もっとも基本的な男性用肌シャツは(Tシャツと布地も縫製もほぼ同じもの),アメリカで卸売価格が約1ドルだった。安くはなく,小売段階ではさらに高くなっていた。その結果,平均的アメリカ人はシャツを8枚しか持っていなかった。
今でも,Tシャツの卸売価格は1ドルだ。しかし今日の1ドルは100年前に比べ,25分の1の価値しかないので,100年前のシャツ1枚は今のTシャツ25枚分に相当する。そのため,今では誰も古着を着る必要はなく,ホームレスの中にはシャワーや洗濯の機会よりも,タダで服を着られる機会のほうが多いので,しばらく着ると捨ててしまう者もいる。
クリス・アンダーソン 高橋則明(訳) (2009). フリー:<無料>からお金を生み出す新戦略 日本放送出版協会 p.70
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