今や<欲求段階説>としてよく知られるマズローの答えはこうだ。「すぐに別(高次)の欲求が現れ,生理的空腹に代わってその肉体を支配する」。マズローの5つの段階の一番下には,食べ物や水などの生理的欲求がある。その上は安全の欲求で,三段目は愛と所属の欲求,四段目が承認の欲求で,最上段が自己実現の欲求である。自己実現とは,創造性などの意義あるものを追求することだ。
同様の段階構造が情報にも当てはまる。ひとたび基本的な知識や娯楽への欲求が満たされると,私たちは自分の求めている知識や娯楽についてより正確に把握できるようになり,その過程で自分自身のことや自分を動かしているものについてもっと学ぶことになる。それが最後に私たちの多くを,受け身の消費者から,創作に対する精神的報酬を求める能動的な作り手へと変えていく。
クリス・アンダーソン 高橋則明(訳) (2009). フリー:<無料>からお金を生み出す新戦略 日本放送出版協会 p.239
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