要するに,私たちが報酬なしでも喜んですることは,給料のための仕事以上に私たちを幸せにしてくれる。私たちは食べていかなければならないが,マズローの言うとおりで,生きるとはそれだけではない。創造的かつ評価される方法で貢献する機会は,マズローがすべての願望の中で最上位に置いた自己実現にほかならず,それが仕事でかなえられることは少ない。ウェブの急成長は,疑いなく無償労働によってもたらされた。人々は創造的になり,何かに貢献をし,影響力を持ち,何かの達人であると認められ,そのことで幸せを感じる。こうした非貨幣的な生産経済が生まれる可能性は数世紀前から社会に存在していて,社会システムとツールによって完全に実現される日を待っていた。ウェブがそれらのツールを提供すると,突然に無料で交換される市場が生まれたのである。
クリス・アンダーソン 高橋則明(訳) (2009). フリー:<無料>からお金を生み出す新戦略 日本放送出版協会 p.251
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