子どもが熱を出したときに解熱剤を与えるということをよくやるが,これについてはどうなのだろうか。治療方法は,少しづつではあるが変わってきている。子どもの熱が上がり始めると,たいていの親や医師は不必要にあわててしまうが,医師の中にはこうした「熱恐怖症」に対して警告している人もいる。WHO(世界保健機構)の広報誌に載ったある論文では,子どもへの解熱剤の投与に関する多数の研究を調べていた。その結果は驚くべきもので,解熱剤を飲んでも飲まなくても,病状やそれの続く日数,子ども自身の気分にちがいはないことがわかった。ある研究では,よく効く薬と偽薬(プラセボ)のどちらを子どもに与えたか親に告げないという実験が行われた(親には事前に実験の了承を得ている)。病気が治った後,子どもが飲んだ薬がどちらだったかを親が当てる。結果は,正解者が5割ほどと,偶然当たったといわれても納得できる正答率だ。治療を受けている子どもは,活動量と覚醒度がやや高かったが,重視するほどのものではない。論文の著者は,これが研究の結論というわけではないが,とても興味深い結果だとしている。
マーリーン・ズック 藤原多伽夫(訳) (2009). 考える寄生体:戦略・進化・選択 東洋書林 pp.36-37
(Marlene Zuk (2007). Riddled with Life: Friendly Worms, Ladybug Sex, and the Parasites That Make Us Who We Are. Orland: Houghton Mifflin Harcourt.)
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