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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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異食症について

 異食症の病理学的な説明に話を戻すと,土は天然のサプリメントのようなもので,ふだん食べ物からからは得られないミネラル分を摂取できると考えられる。妊娠している女性は,胎児に栄養分をとられて栄養不足になりやすい。そのことを考えると,お腹の大きな女性が土を食べる理由は,このあたりにあるのかもしれない。一方で,土食は単に病原体の影響を抑える手段として進化してきたとも考えられる。ここにひとつ,土食のメリットを探った大胆な研究がある。この研究では,ガラスとプラスチックでできた腸の模型と,消化液に似た液体を使って,カオリンの粘土がキニーネやタンニンといった毒素を簡単に吸収できることがわかった。
 人間以外の動物や,ケニアのルオ族のような大きな集団に土を食べる習慣があることを考えると,土食が精神的混乱の兆候だという見方には,私は疑問を抱く(ほとんどのコンゴウインコが精神的に不安定だというのなら別だが)。ルオ族の実験で,土を食べる子どもの寄生虫への再感染率が高かったという結果は,現代生活の産物なのかもしれない。かつては,遊牧生活を送ることが多かったので,食用とする土の中で寄生虫の卵が成長する前に,すみかを変えていたとも考えられるし,ある程度の寄生虫に感染するのは,土食によって症状が抑えられているかぎり許容できたとも考えられる。いずれにしても忘れないでほしいのは,私たち,そしてほかの生き物が寄生虫をもつべきでないという考え方は,現代になって生まれたものであり,自然の状態ではない。体内に寄生虫をもち,病気とともに進化してきた時代には,駆虫するという行為は考えられなかった。そして,寄生虫の卵を1,2個食べてしまう害よりも,土を食べるメリットのほうが大きかったのだ。

マーリーン・ズック 藤原多伽夫(訳) (2009). 考える寄生体:戦略・進化・選択 東洋書林 pp.255-256
(Marlene Zuk (2007). Riddled with Life: Friendly Worms, Ladybug Sex, and the Parasites That Make Us Who We Are. Orland: Houghton Mifflin Harcourt.)
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