フレグルが言うように,もしトキソプラズマに感染した女性に「思いやり」があり,男性に規則を守らない傾向があるとすると、「やさしさ」というのは,人間の性格のひとつだとつねに言えるのだろうか。もしかしたら,病気の症状の一種にもなり得るのだろうか。トキソプラズマにしろ何にしろ,ある人が長年抱えてきた病気を治した結果,その人の性格が変わったとしたら,果たして元の性格はその人自身のものだったと言えるのか。やさしさや無謀さなどの性格が生活環境から影響を受けるのを否定する人はいないが,ある女性が寄生者からも影響を受けているとしたらどうだろう。その女性は,寄生者なしで同じくらいやさしいほかの女性よりも,本当はやさしくないのだろうか。
マーリーン・ズック 藤原多伽夫(訳) (2009). 考える寄生体:戦略・進化・選択 東洋書林 p.347
(Marlene Zuk (2007). Riddled with Life: Friendly Worms, Ladybug Sex, and the Parasites That Make Us Who We Are. Orland: Houghton Mifflin Harcourt.)
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