そして目の前の不況から社会がよりよい方向に進むために,よりよい道筋に社会が向かうためにもう一つ大切だと僕が考えることがある。
それは「豊かな者が,なるべくお金を使うようにする」ということだ。
「ノブレス・オブリージュ」という言葉があるとおり,ある程度の資産を持つ者は,社会に対して義務を果たすべきである。
とはいえ僕が言いたいのは,たとえば,豊かな個人はなるべくおいしい高級料理店で外食したり,自宅のリフォームをするといったこと。法人であれば,設備投資を行ったり,企業を買ったりするようにすることだ。
できる範囲内でもちろん構わない。そうやって「お金を使うこと」を,社会のために心がけてはどうだろう。
とにかく目の前の経済成長のためには支出の増加が必要である。
厳しい状況に追い込まれて支出を切り詰めざるを得ない者が増えている状況下では,まずは余裕のある者から支出を再開することで,社会に還元していく気概を持たなくてはいけないと思う。
これは豊かな者自身にとっても,決して悪いお金の使い方ではないはずだ。不況時のほうが,そうでないときよりも投資額は安く有利にできるのだから。同じ支出であっても,ただ“義務”としてするのではなく,自らの欲望,野望を解き放つことで支出を拡大し,それが社会への還元にもなると考えればいいのである。
鈴木貴博 (2009). 会社のデスノート:トヨタ,JAL,ヨーカ堂が,なぜ? 朝日新聞出版 pp.219-220
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