たいていの女性は,夫や恋人に相談をもちかけるのを,とても自然なことと考えている。けれども男性は,決断を下す際,自分ひとりで決めてしまう場合が多い。女は,話しあうことに<親和>を感じ,決断もお互いの合意のもとに下されることを望んでいる。
ところが男は,とるに足らない(と思えるような)決断を下すのに,妻や恋人を相手に長ったらしい話しあいなど不要だと考える。しかも,誰かに相談しなければ行動できないのは,ひとつの束縛であり,<独立>の危機として受け取ってしまう。女性が話しあいの口火を切るべく,「あなたはどう思う?」と水をさし向けたときにすら,決断を下してほしいと言われたものと勘違いする男性が,存外たくさんいるのではないか。
人の世で生きていくためには,<親和>が求められる。一方,自分らしく生きていくためには,<独立>が必要だ。人と人とのコミュニケーションは,この<親和>と<独立>という相対立する2つの要素のバランスをとりながら進められる,微妙なかけ引きだといえるだろう。
デボラ・タネン 田丸美寿々(訳) (2003). わかりあえる理由・わかりあえない理由:男と女が傷つけあわないための口のきき方8章 講談社 p.37-38
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