男女のスタイルに気づかないうちは,互いに相手の性格(「あなたは自己中心的だわ」「君は非論理的だよ」)や,意図(「聞いてくれる気持ちがないのね」「僕の話の邪魔をするつもりかい」)を,悪者に仕立ててしまいがちだ。
しかし,それがスタイルの違いとわかれば,ムダな衝突は避けられる。「あなたは私の話に興味がないのね」「私のことを心配してくれていないんでしょう」「君は僕の自由をとり上げようっていうのかい」などとののしりながら,いちばん親しいはずの人とやりあうのはこの上なく寂しい。
そんなときに,「この人は私とは違ったスタイルで,話に耳を傾けているんだわ」「彼は彼なりの方法で,私を気づかっているのよ」「彼女は僕との間に真剣に<親和>を築こうとしてるんだな」と理解できたなら,相手を非難したり自分を責めたりすることなく,自ら姿勢を調整し,相手にも協力してもらいながら,相互理解のベースに立ったやりとりができるはずだ。
もちろん,互いの会話スタイルが理解できたところで,意見の不一致そのものはなくせないだろう。しかし,スタイルの相違に振りまわされず,純粋に問題そのものに焦点を当てた話しあいはできるようになると思う。
デボラ・タネン 田丸美寿々(訳) (2003). わかりあえる理由・わかりあえない理由:男と女が傷つけあわないための口のきき方8章 講談社 pp.291-292
PR