指示的ジェスチャーには発声の先駆けになったことを示す側面がある。ジェスチャーと発声を同時に行うとき,例えば二重課題で,画面に出てきたシンボルの名前を言うことと,そのシンボルに対応した手の形をつくることを同時に行うとき,発声とジェスチャーが干渉し合うことがある。ただし干渉の程度は等しくないようだ。ジェスチャーのせいで発声はわずかに遅くなるが,ジェスチャーが発声の課題のせいで遅くなることはない。また,説明のためのジェスチャーは関連する発声に先立って行われ,後になることはない。また,ジェスチャーは単語検索を促進することも知られている。これらの現象はジェスチャーがコミュニケーションの体系の中にしっかりと確立されていることを示す。おそらく進化の過程に原因を見つけることができるだろう。
マイケル・コーバリス 大久保街亜(訳) (2008).言葉は身振りから進化した:進化心理学が探る言語の起源 勁草書房 pp.167-168
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