しばらく前から,日本の皮膚の学界ではアトピー性皮膚炎の治療にステロイドを用いることを認める「ステロイド派」と,ステロイドには副作用があるとして,その使用を認めない「アンチステロイド派」の争いが凄まじい様相を呈しています。主流派ステロイド容認派です。事の発端は「アンチステロイド派」の中に金儲け目的のインチキ療法が少なからず存在したことのようです。ストレイドが危険であると主張し,そのかわりに自前の治療法を売り込む。その中にはかえって肌荒れを引き起こす療法もありました。これはいけないことであり,患者の苦しみは十分理解できます。私はそういうインチキの被害を受けたことはありませんが,それにつけこむ輩は許せません。もっとも最近はタクロリムスという免疫反応を抑える薬もアトピー性皮膚炎に使われるようになり,争いは鎮まってはきています。
ただ,以上を前提に言いますが,それでも代替療法の中には個人的に効果があるな,と認識できたものも確かにあったのです。これは私個人についてのみ特異的に起きたことかもしれません。一方,これも私の経験ですが,ステロイド外用剤の連用にそれほど神経質になる必要はないと思っています。ただし,ステロイド剤は炎症を抑える薬剤であって,今だ正体不明のアトピー性皮膚炎そのものの治療薬ではないことを申し添えておきます。
傳田光洋 (2007). 第三の脳:皮膚から考える命,こころ,世界 朝日出版社 pp.155-156
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