どんな企業でも,様々な形態の非正規社員が存在するようになっている現在,フリーターに対してネガティブな声が多いことは事実であるが,多くの企業が彼らを積極的に活用しているのも事実である。彼らの労働力なくして,現在の企業活動は成り立たないというのが実態に近いのかもしれない。
本書を手にしている就活学生の親世代であれば,こうした実勢は実感を伴って理解いただけることと思う。リストラの危機,実力主義の導入などは,決して新聞やテレビの中の話だけではすまされない。現実の職場ではフリーターの若者と共に働きつつ,家庭に帰れば我が子の就活を見守るその心中を推察すれば,複雑な思いもあるだろう。職場で接するフリーターたちは,我が子とそう違わない世代の,同じ若者である。彼らが安価な労働力を提供してくれるお陰で,企業は回っている。しかしながら,我が子のこととなると,話は別である。彼らの姿に未来の我が子をダブらせるわけにはいかないのだ。親心とはそうしたものである。とはいえ,現実は容赦ない。だから,気をもむのである。
中村昭典 (2009). 親子就活:親の悩み,子どものホンネ アスキー・メディアワークス pp.63-64
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