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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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多様性はどこも同じ

 ポリネシアで発生した多様性は,世界の他の地域で見られるものと本質的に同じである。もちろん,世界の他の地域の多様性のほうがポリネシアよりずっと変化に富んでいる。ポリネシアのように石器に頼る民族も世界じゅうの大陸で出現しているが,南米では貴金属の利用に熟達した社会も生まれている。ユーラシア大陸やアフリカ大陸では鉄器を使うようになっている。しかし,ポリネシアでは,ニュージーランド以外の島々には金属資源がなかったので,鉄器や貴金属の利用はもともと起こりえなかった。ユーラシア大陸には,ポリネシアに人が定住するようになる以前にいくつもの帝国がすでに出現している。後世には,南米や中米にも帝国が出現している。ポリネシアにも帝国の前進と呼べるようなものが2つ出現したが,そのうちのひとつであるハワイ諸島はヨーロッパ人が来てから統一されたものにすぎない。ユーラシア大陸と中米は独自の文字を発達させているが,ポリネシアでは文字が生まれることはなかった。イースター島の謎めいた文字も,島民とヨーロッパ人との接触のあとに生まれたものかもしれない。
 つまり,ポリネシアの社会を見ても,世界じゅうの社会の多様性すべてを見ることはできない。ここで見られるのは,そのほんの一部だけである。しかし,ポリネシアが世界の一角にすぎないことを考えれば,この結果はまったく驚くにあたらない。くわえて,ポリネシアに人類が住みついたのは遅く,最古のポリネシア社会でも3200年しかたっていない。これに対して他の大陸では,人類が住みついたのがもっとも遅い大陸(南北アメリカ大陸)でさえ1万3000年前である。トンガやハワイの人びとにあと数千年という時間があったら,彼らはおそらく太平洋の支配をめぐって争う二大帝国になっていたかもしれない。帝国統治のために独自の文字を発達させていたかもしれない。ニュージーランドのマオリ族も,軟玉などを使った道具だけでなく,銅製や鉄製の道具を発達させていたかもしれない。

ジャレド・ダイアモンド 倉骨彰(訳) (2000). 銃・病原菌・鉄 上巻 草思社 pp.95-96
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