前回の作戦についても少し述べておこう。手始めに,前述したマサチューセッツ大学での調査の話をしたい。この調査からは,いくつかの興味深い結論がでている。質問の1つに,違法な占領や深刻な人権侵害を正すためにアメリカは武力介入すべきだと思うか,というものがあった。約2対1の割合で,アメリカ国民はそうすべきだと考えていた。違法な土地占拠や「深刻な」人権侵害があった場合には,われわれは武力を用いるべきである,と。
アメリカがこの助言に従うなら,私たちはエルサルバドル,グアテマラ,インドネシア,ダマスカス,テルアビブ,ケープタウン,トルコ,ワシントンなど,あらゆる国の都市を爆撃しなければならなくなる。それらはみな違法な占拠や侵犯や,深刻な人権侵害という条件を満たしているのである。こうした事例の多さを知っていれば,サダム・フセインの侵略や残虐行為も,多くの事例のうちの1つでしかないことがよくわかるだろう。フセインがやっていることは,とびきり極端な行為ではないのだ。
どうして誰もこのような結論に到達しないのだろう?
ノーム・チョムスキー 鈴木主税(訳) (2003).メディア・コントロール:正義なき民主主義と国際社会 集英社 pp.53-54
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