改めて言っておきたいのだが,問題は単に偽情報や湾岸危機にあるのではない。
問題はそれよりもずっと奥が深い。私たちは自由な社会に住みたいのだろうか。それとも自ら好んで背負ったも同然の全体主義社会に住みたいのだろうか。
とまどえる群れが社会の動きから取り残され,望まぬ方向へ導かれ,恐怖をかきたてられ,愛国的なスローガンを叫び,生命を脅かされ,自分たちを破滅から救ってくれる指導者を畏怖する一方で,知識階級がおとなしく命令にしたがい,求められるままスローガンを繰り返すだけの,内側から腐っていくような社会に住みたいのだろうか。
そして,他人が支払ってくれる報酬を目当てに,世界を叩きつぶしてまわる傭兵国家になりさがりたいのだろうか。どちらを選ぶかは,私たちしだいだ。この選択に1人1人が向きあわなければならない。答えは,私やあなたのような一般の人びとの手中にあるのだ。
ノーム・チョムスキー 鈴木主税(訳) (2003).メディア・コントロール:正義なき民主主義と国際社会 集英社 pp.70-72
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