文化人類学者はよく,人間社会をいくつかのカテゴリーに分類しようとする。しかし,人間社会の多様性は,音楽様式や生活様式などと同様,時間の経過とともに連続的に変化するものであり,段階的に線引きする分類はどうしても不完全なものにならざるをえない。それらは,すべての段階で連続しており,前段階の終わりとつぎの段階のはじまりの区別そのものが恣意的である(これは,19歳を未成年とするのか,それとも若い大人とするのかの問題に似ている)。また,異なる順序で出現するものを段階という区画に押し込むことになるので,どうしても不均質な分類にならざるをえない(ブラームスとリストはロマン派の作曲家としてひとつに分類されているが,これを知ったら,彼らは墓の中で嘆き悲しむことだろう)。とはいえ,恣意的に段階を区切る分類方法は,注意事項を念頭に入れておけば,音楽や人間社会の多様性について論じるには便利である。
ジャレド・ダイアモンド 倉骨彰(訳) (2000). 銃・病原菌・鉄 下巻 草思社 p.88
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