忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ミードの誤りは有名だが,これは誰のこと?

人口25人の小規模血縁集団を3年間観察して,殺人は1度も見かけなかったという調査結果にもとづき,人類学者が小規模血縁集団や部族社会を非暴力的で穏やかな社会と理想化していたこともあった。しかし,そのような集団では,殺人など起こるはずがないのである——大人十数人と子供十数人が,避けようのない死とともに日々暮らしている社会で,3年ごとに大人が1人殺されたら集団が存続しえないことは想像にかたくない。とはいえ,小規模血縁集団や部族社会をもっと長期にわたって,詳しく観察した調査では,殺人が主な死因の1つであることが明らかになっている。私自身も,ニューギニアのイヤウ族の女性たちが,自分の身のまわりで起こった殺人について話すのを耳にしたことがある。それは,ある女性人類学者がイヤウ族の女性たちにそれまでの人生について取材しているところに,たまたま出くわしたときのことだった。彼女たちは,夫の名前を尋ねられると,暴力によって殺された複数の夫の名前を,誰もがつぎつぎと口にした。彼女たちの典型的な受け答えは,つぎのようなものであった。「私の最初の夫は,奇襲をかけてきたエロピ族の男たちによって殺されてしまった。2番目の夫は,私を欲しがった男によって殺された。そして,3番目の夫になったその男も,仇をとりにきた2番目の夫の弟によって殺された」。こうした事件は,穏やかと思われていた部族社会で頻繁に起こっていた。規模が大きくなるにしたがい,部族社会が集権化されるようになった一因も,そこにあったと思われる。

ジャレド・ダイアモンド 倉骨彰(訳) (2000). 銃・病原菌・鉄 下巻 草思社 pp.102-103
PR

TRACKBACK

Trackback URL:

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]