われわれは,中国が統一されていることを当然のこととし,それがどれほど驚くべきことであるかを忘れている。だが,たとえば遺伝子レベルで中国人を考察すれば,中国が統一されているとの思い込みはありえなかったはずである。人種の分類上,中国人は,大雑把にモンゴロイドとしてくくられる。しかし,中国人のあいだには,スェーデン人とイタリア人とアイルランド人のちがいよりも,もっと多様なちがいが見られる。とくに,北部の人と南部の人は,遺伝子的にも外見的にも非常に異なる——北部の中国人はチベット人やネパール人に近く,南部の中国人はベトナム人やフィリピン人に近い。私の友人の中国人たちは,外見だけで北部の人なのか南部の人なのかをすぐに識別できる——北部の中国人は,南部の中国人より背が高い。体重も重い。色白である。鼻先も尖っている。目も蒙古ひだと呼ばれるものの影響で「つり上がっていて」小さい。
ジャレド・ダイアモンド 倉骨彰(訳) (2000). 銃・病原菌・鉄 下巻 草思社 p.173
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