そして,もっとも特異なのがマダガスカル島である。東アフリカの海岸線から250マイル(約400キロ)のところに位置するこの島は,インド洋を挟んでアジアやオーストラリアから隔てられている。どの大陸よりもアフリカ大陸に近い島に居住しているマダガスカル人は,人種的に2つの要素が混じり合った人びとである。当然のことながら,1つの人種的要素はアフリカの黒人である。そして,マダガスカル人の容貌からすぐ推測できるように,もう1つは熱帯東南アジア人の要素である。言語もまた特徴的で,マダガスカル島ではアジア人,黒人,混血を問わず,すべての人種がオーストロネシア語を話している。そして,彼らのオーストロネシア語は,マダガスカル島から4000マイル(約6400キロ)離れているボルネオ島で話されているマーニャン語に近い。わずかなりともボルネオ人に似ている人種で,マダガスカル島から数千マイル以内に居住しているのは,当のボルネオ人だけである。
ジャレド・ダイアモンド 倉骨彰(訳) (2000). 銃・病原菌・鉄 下巻 草思社 p.264
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