創造性については,あるエピソードを思い出します。私は日本とアメリカの両方で野外教育の指導者になるトレーニングを受けました。野外教育の体制は日本では昭和の初めから確立していました。トレーニングの骨子はそのころにアメリカから学び確立したものだと思います。そのテキストに,「10人の子供がいて9人が野球をやりたがり,1人が山で絵を描きたがっている。あなたはどうしますか?」という設問がありました。答えは「1人を説得して野球をやらせる」でした。何年か後にニューヨークでアメリカ向けのトレーニングを受けた際のテキストに全く同じ設問を発見しました。予想どおり原本はアメリカにあったというわけです。しかし,その答えは次のようなものでした。「9人に勝手に野球をやらせて,大切な1人の子と山に行きなさい」。このように,日本では独自の発想を後押ししない風潮があり,創造性の芽が育ちにくい背景がありましたが,最近ではその状況も変わってきています。
村井 純 (2010). インターネット新世代 岩波書店 p.188
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