NSFは科学技術の現状をまとめた報告を定期的に出版している。2002年の報告書では,科学技術にかんする大衆の理解に1章をさいている。その一節では,疑似科学信奉の問題が広まりつつあると指摘されている。科学と称しているが,科学的な原理や証拠にもとづかない「科学もどき」に対する批判である。2001年に実施した世論調査で「超能力をもつ人々がいる」の信奉の程度を5段階で聞いたところ,全米の成人の60パーセントが「強くそう思う」か「そう思う」と答えたのである。ギャラップの世論調査でも,1990年,96年,2001年と,このパーセンテージは増加しており,こうした傾向は,合衆国の科学教育がみじめな状態であると判断する根拠にされている。
これは本当にみじめな状態なのだろうか。むしろ,興味深い事実を指摘しているのではないか。調査の回答者を教育レベルによって分けると,高校レベルまでの教育を受けていない人々で超能力を是認する人は46パーセントなのに対して,高校レベルい上の教育を受けている人々では62パーセントにはねあがる。新聞を毎日読むなどの情報に敏感な人々でも59パーセントが認めているのである。調査結果はなんと,超能力の信奉は教育の欠如では「説明がつかない」と示しているのだ。
ディーン・ラディン 竹内薫(監修) 石川幹人(訳) (2007). 量子の宇宙でからみあう心たち:超能力研究最前線 徳間書店 pp.80-81
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