墓参りの慣習は日本以外の東アジアでも共通することで,中国や台湾,韓国では熱心に墓参りをする。沖縄は,墓の形態が本土とは異なっていて,門中墓という一族の大きな墓があり,墓参りの折には家族,親族がそこに集まって,掃除し,持ち寄った料理を一緒に食べる。墓参りは,家の祭りであるとも言える。
ところが,これがヨーロッパになると,墓参りの慣習はほとんどない。墓をもうけるものの,それは個人を葬る空間にすぎず,残された家族が命日などにその墓に参ることはない。そもそも個人墓が主流で,日本のような家の墓はない。墓参りをしないため遺族も墓の場所を忘れてしまう。墓に参ることがあるとすれば,著名人のものに限られる。それは一種の観光である。
場合によっては,遺体を火葬場に持ち込んだ後,遺族が火葬の終了を待たずに返ってしまうこともある。遺骨は火葬場で処理され,遺族がそれを持ち帰って墓を作ったりしないのである。
島田裕巳 (2010). 葬式は,要らない 幻冬舎 pp.148-149
PR