もしこれまで実在した数学者の中でもっとも不愉快な数学者は誰かと問われたとき,ヨハン・ベルヌーイの名を挙げておけば,それほど的をはずしていないだろう。彼は歴史書で,嫉妬深い,虚栄心が強い,怒りっぽい,頑固,癇癪持ち,自慢好き,不誠実,このうえない嘘つき,などと,さまざまに評されてきた。数学の世界では多くのことを成し遂げたが,息子ダニエルと争った賞を息子が手にするや彼を科学アカデミーから追い出したり,兄のヤーコプやライプニッツのアイデアを盗み取ろうとしたり,水力学に関するダニエルの本を盗作し,出版日を偽って,自分の本が最初に出版されたかのように見せかけるなど,そうしたことでも名を馳せていた。
レナード・ムロディナウ 田中三彦(訳) (2009). たまたま:日常に潜む「偶然」を科学する ダイヤモンド社 p.154
(Mlodinow, L. (2008). The Drunkard’s Walk: How Randomness Rules Our Lives. New York: Pantheon.)
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