われわれが成功とか失敗とかを目にする場合,われわれはたった1点のデータ,つまりベル曲線上の1点を観察しているにすぎない。観察しているその1点が,はたして平均値を表しているのか異常値を表しているのか,当てにできる出来事なのかまれな出来事なのか,われわれにはわからない。しかし最低でもわれわれが知っておくべきことがある。それは,標本点は標本点にすぎないということ,つまり,それを単純にリアリティとして受け入れるのではなく,標準偏差という文脈の中で,あるいはそれを生み出した可能性の幅の中で,それを見るべきであるということ。ワインの格付けが91点でも,同じワインが繰り返し格付けされたり別の人間によって格付けされたりするときに生じるバラツキの評価がなければ,その数字は無意味である。
レナード・ムロディナウ 田中三彦(訳) (2009). たまたま:日常に潜む「偶然」を科学する ダイヤモンド社 p.212
(Mlodinow, L. (2008). The Drunkard’s Walk: How Randomness Rules Our Lives. New York: Pantheon.)
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