今度,何かどきりとするようなことを耳にすれば,データを調べていただきたい。絶対的な数字——あるいはまったく何の数字もないこと——には疑いを抱くべきである。たとえば,初めて親になった人たちには現在,乳児突然死症候群(SIDS)についてあふれんばかりの注意がなされる。1歳以下の乳児の原因不明の死を乳児突然死症候群という。子供の命がかかっていて,すぐにでも予防策(たとえば乳児を仰向けに寝かせること)がとれることを考えれば,それらの警告も理解できる。だが初めて親になった人たちに病院で手渡される警告入りの怖いパンフレットがリスクを客観的にとらえているのであれば,そのほうがはるかに好ましいであろう。たとえば,警告に次のような表現を付け加えることもできるはずだ。「SIDSはいまだよく解明されていない。だがその発症率は史上最低を記録している。それは,一部にはあなたがたのような両親がこのパンフレットに記載されている基本的な予防措置を講じているからである。このような症候群で亡くなるのは,1000人の乳児につき1人以下である(先天性欠損症や出生時の体重不足で死ぬ幼児の数はこの4倍である)。だから真夜中に7回も起きて乳児が呼吸しているかどうか確かめる必要はなく,記載した単純な決まりに従うだけでよい——そして眠ることに集中して下さい。そのほうが100パーセント近い確率ではるかによい親になることでしょう」
アマンダ・リプリー 岡真知子(訳) (2009). 生き残る判断 生き残れない行動:大災害・テロの生存者たちの証言で判明 光文社 p.109
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