答えはわたしたちが予測しているようなものではない。回復力がある人々は,必ずしもヨーガを実践している仏教徒たちではない。彼らが十二分に持っているものの1つは,自信である。恐怖に関する章で見てきたように,自信——現実的な練習や笑いからでも生じるものだが——は極度の恐怖の破滅的な影響を和らげてくれる。最近のいくつかの研究で,ありえないほどの自信にあふれている人は,災害時に目を見張るほどうまくやっていく傾向があることがわかった。心理学者はこのような人々を「自己向上者」と呼ぶが,一般の人なら彼らを傲慢と称すだろう。この種の人々は,他人の評価よりも高く自分自身を評価し,自己陶酔したはた迷惑な人間になりがちなのだ。ある意味では,現実の生活よりも危機にうまく適応できる人々なのかもしれない。
アマンダ・リプリー 岡真知子(訳) (2009). 生き残る判断 生き残れない行動:大災害・テロの生存者たちの証言で判明 光文社 pp.169-170
引用者注:「自己向上者」は何を訳したものだろうか?と思い,amazon.comの「Look Inside」で検索したところ“self-enhancers”であった。self-enhancementは「自己高揚」なので「自己高揚者」のほうが「自己が膨張している」ニュアンスではないだろうか。ちなみにこの章の日本語タイトル「非常時の回復力」は“Resilience”である。日本語ではカタカナで「レジリエンス」とか「弾力性」とか。
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