認知療法は行動療法の技法を用いるが,これは認知に変化をもたらすためである。さらに,認知の変化は新たな行動をうまく維持するために必要であり,行動の変化は認知の変化をいっそう促進する可能性があると考える。
認知療法は,情動(emotion/affection),行動(behavior),認知(cognition)の各側面を統合して人の機能を説明しようと試みる。この3側面への手がかりとして,また変化を達成する主要動因として,認知療法では認知の側面を重視するが,それでもやはりすべての側面に取り組む必要があるとする。
「認知療法が誕生するまでのセラピストは,洞察力をはたらかせる(つまり精神分析家)か,行動主義をとる(つまり人間中心主義者)かのどちらかで,この2つが重なることはありませんでした。思考と感情と行動パターンの関連性を研究できるとか,まして成果が得られるなどとは,だれも考えていなかったのです」とマイケル・マホーニーは語る。
マージョリー・E・ワイスハー 大野 裕(監訳) 岩坂 彰・定延由紀(訳) (2009). アーロン・T・ベック:認知療法の成立と展開 創元社 pp.91
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