Lewis(1971)は恥と罪悪感を区別した。ルイスによれば,恥と罪悪感の違いは,きっかけとなる出来事の違いではなく,そうした出来事がどのように解釈されるかの違いである。関心が「行動」に向けられるか,「自己」に向けられるかの違いである。
関心が「行動」に向けられると罪悪感を感じる。罪悪感とは,自分のしたこと(あるいはできなかったこと)を否定的に評価することである。「わたしはなんて恐ろしいことをしたんだ」と感じることである。行動に注目するので,緊張や自責や後悔の念を生むのである。罪悪感を感じると,自分の行動について繰り返し考え,別にふるまえばよかったと思ったり,すでにしてしまったことを何とか元通りにできないかと考えるのである。
一方,関心が「自己」に向けられると恥を感じる。恥とは,自分自身を否定的に見ることである。「私は価値のない人間だ。無能で悪い人間だ」と感じることである。恥を感じると,自分が縮んで小さくなったように感じる。無力でさらされていると感じる。まわりに実際の人がいなくても,他者の目に映る自分の姿をイメージしていることが多い。たしかに恥においても,罪悪感のように「行動」に関心が向くこともあるが,そうした行動が自分の欠点を示すものと考えられてしまうのである(Lewis, 1971; Tangney, 1995a)。
J.P.タングネー & P.サロベイ (2001). 恥・罪悪感・嫉妬・妬み:問題をはらむ社会的感情 R.M. コワルスキ&M.R.リアリー(編著) 安藤清志・丹野義彦(監訳) 臨床社会心理学の進歩 実りあるインターフェースをめざして 北大路書房 191-221.
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