性格概念と対応する内的要因が生理的要因や解剖学的要因のように,客観的に観察可能な要因である場合には,それと性格概念との対応は(性格概念が客観的に測定可能になっているという条件で)実証的に確認することができる。しかし,心理学において性格概念と対応させられている内的要因は,ほとんどが心理学的な実体(つまり「こころ」の構成要素)であり,客観的に観察可能ではない。
性格概念と内的実体との対応が実証的に確認できない場合に,その対応の根拠となるのは,性格概念と関係する性格関連行動が通状況的に一貫することだけである。状況と対応しない(状況から独立である)以上,内的であるだろう,という排中律的な判断が行われる。ただし,そうした判断によって明らかになるのは,その性格概念が何らかの内的実体と対応している,ということだけであり,どのような内的実体と対応しているかは理論的にしか説明されない。
渡邊芳之 (2010). 性格とはなんだったのか:心理学と日常概念 新曜社 pp.52-53
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