プラセボ効果は,条件付け説と期待説のどちらか一方,またはその両方と結びついているのかもしれない。あるいは,未知の重要なメカニズムが存在する可能性もあるし,既知のメカニズムではあっても,十分に解明されていないものがあるかもしれない。科学者たちは,プラセボ効果の科学的基礎はまだ解明していないが,ヘイガースの初期の仕事にもとづいて,プラセボ効果をできるだけ大きくするにはどうすればよいかは突き止めた。たとえば,患者に薬を投与するときは,錠剤よりも注射のほうがプラセボ効果は大きく,患者が薬を飲むときには,一錠よりも二錠のほうがプラセボ効果が大きい。さらに驚いたことに,不安を和らげるためには,錠剤が緑色のときにプラセボ効果は最大になり,抑鬱を改善するためには,錠剤が黄色いときに最大になる。また,錠剤をもらう相手は,白衣を着た医師のときにプラセボ効果は最大になり,Tシャツを着た医師からもらうとこの効果は小さくなり,看護師からもらえばいっそう小さくなる。大きな錠剤は小さな錠剤よりもプラセボ効果が大きい——ただし,非常に小さい錠剤はそのかぎりではない。また,予想されるように,高級感のある箱に入った錠剤のほうが,質素な箱に入った錠剤よりもプラセボ効果が大きいことがわかっている。
サイモン・シン&エツァート・エルンスト 青木薫(訳) (2010). 代替医療のトリック 新潮社 pp.87-88
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