人間に対するホメオパシーの臨床試験を見ていくに先だち,動物に対するホメオパシーの効果を調べたランダム化プラセボ対照対象比較試験がいくつかあるので,まずそれを見ておくことにしよう。動物については大規模な研究がいくつか行われているが,結論をまとめると,ホメオパシーは動物にはまったく効果がない。たとえば2003年には,スウェーデンの国立獣医学研究所で,仔牛の下痢の治療に関して,《ポドフィルム》というホメオパシー・レメディに対する二重盲検化臨床試験が行なわれたが,ホメオパシーの有効性を支持する科学的根拠は得られなかった。もっと最近では,ケンブリッジ大学の研究グループが,雌牛の乳房炎の治療に関して,250頭の雌牛に対しホメオパシーの二重盲検化プラセボ対照比較試験を行った。乳房炎が改善したかどうかを客観的に調べるために,乳に含まれる白血球が数えられたが,結論を言えば,ホメオパシーにはプラセボ以上の効果はないことが示された。
サイモン・シン&エツァート・エルンスト 青木薫(訳) (2010). 代替医療のトリック 新潮社 p.170
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