残念ながら,ホメオパシーには思いがけない危険な副作用がありうる。それは,直接的にどれかのレメディによって引き起こされる副作用ではなく,医師の代わりにホメオパスが医療についてアドバイスを与えることによる,いわば間接的な副作用だ。
たとえばホメオパスの多くは予防接種に対して否定的なので,ふだんからホメオパスにかかっている親では,子どもに予防接種を受けさせないことが多くなるかもしれない。その問題姓を評価するために,エクセター大学のエツァート・エルンストとカーチャ・シュミットは,イギリス国内のホメオパスについて興味深い調査を行った。2人はインターネット上の職業別広告から電子メールのアドレスを得て,168人のホメオパスに電子メールを送った。そのメールでは1歳児の母親を装い,はしか,おたふく風邪,ふうしんの予防注射(MMR)を受けさせたものかどうかと相談した。2002年のこの時点では,MMRをめぐる科学上の論争はすでに終結しており,科学的根拠は明らかにワクチン接種を支持していた。104名のホメオパスがメールに返事をくれたが,調査の監督にあたった倫理委員会は,電子メールの背景にある真の目的をホメオパスに情報として与えたうえで,調査に参加したくなければ回答を撤回する機会を与えるよう求めた。案の定,27名のホメオパスが,それと知って回答を撤回した。残る77名のうち,予防接種を受けるよう母親にアドバイスしたのはたった2名(3パーセント)だった。もちろん,調査から降りた27名のホメオパスの回答は,発表もされず評価もされていないが,彼らの回答を平均すれば,より否定的だったと考えるのは妥当だろう。ホメオパスの圧倒的多数は,予防接種を受けることは勧めないのである。
サイモン・シン&エツァート・エルンスト 青木薫(訳) (2010). 代替医療のトリック 新潮社 p.241
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