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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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最年少の論文掲載者

 実は,人間のエネルギー場なるものは作り話にすぎないということを示す証拠ならたくさんある。1996年にはコロラド在住のエミリー・ローザという科学者が,セラピューティック・タッチを調べるために,21名のヒーラーの能力を検証してみることにした。彼女が行った実験は,1枚のスクリーンに2つの穴を開けておき,ヒーラーに両手を入れてもらうという簡単なものだった。そうしておいて,ローザはコインを投げて左右を決め,ヒーラーの右または左の手のすぐ近くに自分の手を置いた。ヒーラーは,エミリー・ローザのエネルギー場を感じ取り,ローザの手がどちら側にあるかを答えなければならない。21人のヒーラーに対して,合計280回の試行が行われた。当初ヒーラーたちは,科学者の手がどちら側にあるかを感じることに自信をもっていた。偶然だけでも50パーセントの正答率になるはずだが,実際にやってみると,セラピューティック・タッチのヒーラーたちの正答率はたった44パーセントだった。この実験で示されたのは,エネルギー場はおそらくヒーラーたちの空想のなかにしか存在しないということだ。
 この実験を行ったとき,エミリーはわずか9歳の少女だった。もともとエミリーが通っている学校の「サイエンス・フェスティバル」のために計画された実験だったが,彼女はその2年後に,看護師である母親の助けを借りながら結果を論文にまとめ,名望ある『米国医学会誌』に発表した。エミリーはこれをもって,査読の手続きを踏む医学専門誌に研究論文を発表した,(本書の著者たちの知るかぎり)最年少の人物となった。当然,「セラピューティック・タッチを精査する」と題したエミリーの論文におもしろくない思いをした人たちもいた。この治療法の原理を打ち立てたドロレス・クリーガーは,「実験の計画および方法論に問題がある」としてエミリーの研究を批判した。しかし,実験はごくシンプルだし,彼女が引き出した結論はほとんど間違いようもないほど明快だ。さらに言えば,彼女の得た結論を覆すような実験を考えついた者は,今に至るまでひとりもいない。

サイモン・シン&エツァート・エルンスト 青木薫(訳) (2010). 代替医療のトリック 新潮社 pp.284
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