10年ほど前から,「ポジティブ心理学」なる新しい学問を支持する人びとは,楽観主義,あるいはポジティブな態度をもってすれば,がんはもちろん,体の不調のほとんどを克服できると主張している。だが,コインらが指摘するように,その理屈は,よくいっても当てにならない。幸せな心と健やかな体とを関連づける——前向きな考え方によって免疫機能が高まることを示す——理論上の要にしても,数年前にさんざん叩きつぶされた。ケンタッキー大学のスーザン・セガストローム准教授が,本人にも意外に思える発見をした。深刻な病気をわずらっているときなど,きわめて大きなストレス要因を抱えている場合には,楽観主義が免疫機能に悪影響を及ぼすこともあるというのだ。
バーバラ・エーレンライク 中島由華(訳) (2009). スーパーリッチとスーパープアの国,アメリカ:格差社会アメリカのとんでもない現実 河出書房新社 pp.158-159
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