ヒギンズとジャッジは大学卒業後の就職活動にのぞんだ100人以上の学生を対象に調査をおこなった。2人はまず学生たちの履歴書に目を通し,たいていの雇い主が採用条件の二大要素としている,仕事への適性と経験について調べた。そして就職試験で面接を終えた学生たちに,面接での対応についてアンケートに答えてもらった。内容は自分の長所をアピールできたか,会社に対する興味を示したか,求められている人材について面接官に質問したかなどである。研究チームは面接官とも連絡をとり,いくつかの点を確認した。応募者の面接での態度,会社への適性,仕事に必要な能力,そして最も重要な採用結果などを訊ねたのだ。
集めたデータを分析した結果,研究チームは雇い主が人を採用する決め手について,これまでの説がまちがっていたことを,意外な事実とともに発見した。採用の決め手は適性か,それとも経験か。じつはどちらでもなかった。だいじなのはただ1つ。応募者の好感度だった。感じのいい印象をあたえた応募者は合格の割合が高かった。彼らはいくつかの方法で面接官を惹きつけ,売込みに成功していたのだ。
その方法とは。仕事とは無関係だが,自分と面接官がたがいに興味をもてる話題で盛り上がる。笑顔を浮かべ,相手と目をあわせる。会社をほめる。この積極性の連続攻撃が,効力を発揮した。これほど感じがよくて社交性のある人材なら,職場にもすぐ溶けこむはずだと面接官が確信し,採用になったのだ。
リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2010). その科学が成功を決める 文藝春秋 pp.45
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