私は240個の財布を買い,宝くじ,割引チケット,にせのメンバーズカードなど,ありふれたものを入れた。それに加えて40個ずつ4組,合計160個の財布に4種類の写真を1枚ずつ入れた。笑顔の赤ちゃん,かわいい子犬,しあわせな家族,穏やかな老夫婦の写真である。5組目の40個の財布には持主が最近慈善事業に寄付をしたことを示すカードをつけ加え,6組目の40個の財布にはなにもつけ加えなかった。つけ加えたものは,財布を開いたときにすぐ目につくような透明なビニールの窓の中に入れた。そのように準備した財布をすべてごちゃまぜにしたあと,通行人の多い通りに1つずつこっそり落とした。ただし郵便ポスト,ごみ箱,ゲロや犬の糞から離れた場所を選んだ。
1週間で52パーセントの財布がもどり,明確なパターンが浮かび上がった。返ってきた財布のうち,6パーセントはなにも加えなかったもの,8パーセントは慈善カードをつけ加えたものだった。老夫婦,かわいい子犬,しあわせな家族の写真を加えた財布が返ってきた割合はそれぞれ11,19,21パーセント。抜群に成績がよかったのは,笑っている赤ちゃんの写真を加えた財布で,なんと35パーセントがもどった。
リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2010). その科学が成功を決める 文藝春秋 pp.75
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