何か新しいことに挑戦しようとするなら,積極的にリスクを取る姿勢が必要です。ただし,リスクは取るか取らないかの二者択一ではありません。心地いいリスクもあれば,不愉快なリスクもあるはずです。自分にとって心地よいものは,危険性を割り引いてリスクだとすら感じないのに,不愉快なものは必要以上に警戒する可能性もあります。たとえば,スキーで斜面を急滑降するとかスカイダイビングが好きな人は,こうした活動をリスクが高いとは思いません。もしそうだとすれば,身体的に大きなリスクを取っているという事実が見えていないのです。わたしのように身体的なリスクを取りたくない人間は,スキーに行っても山小屋でホットチョコレートを飲み,飛行機に乗れば座席ベルトをしっかり締めて座っています。逆に,大勢の前でスピーチをするといった社会的なリスクを取るのが平気な人もいます。わたしはそのタイプで,リスクだとは思っていません。でも,嬉々としてスカイダイビングに興じても,パーティで乾杯の音頭をとるなどもってのほか,という人もいるのです。
ティナ・シーリング 高遠裕子(訳) (2010). 20歳のときに知っておきたかったこと:スタンフォード大学 集中講義 阪急コミュニケーションズ pp.114
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